「2学期になったし、席替えしよう」



 ロングホームルームで担任がいきなり言い出した。

 ……たぶん、前回のロングホームルームで言うのを忘れてたんだろう。



 クジの列に並ぶと、いつの間にか一ノ瀬が後ろにいる。


「柊の隣か、前か、後ろがいいな」


「はいはい」


 聞き流してクジを引く。

 1番後ろ、窓から2列目。まあ、悪くない。



「あ、やった」



 次に引いた一ノ瀬が歓声を上げた。


「柊の隣!」


 見せられた番号は、1番後ろ、窓の横。

 くじ、混ざってなかったんじゃないの?



「せんせー! 卒業まで席替えなしでお願いします!」


「3学期にするよ」


 先生に軽くあしらわれて、それでも一ノ瀬は機嫌よく机を運んだ。


「あと91日! ……よし、机運ぶの手伝うわ」


「自分でやるって」


 私の机も運ぶ。


「えー、あと来月頭に文化祭あるから、引き続き各係で準備を進めるように」


 残りの時間は文化祭の準備に当てられる。

 立ち上がろうとしたら、一ノ瀬が覗き込んできた。

 近いから、椅子ごと後ずさる。


「柊は係、何やってんの?」


「小道具」


 うちのクラスはお化け屋敷。私は脅かすための飾りや、お化けの被り物とかを作る係だ。


「俺、受付なんだよ。正直ヒマだからさ、小道具一緒にやっていい?」


「ダメ」


 一ノ瀬が不貞腐れた顔になる。


「受付用の小道具いるから。受付係は必要なものの、依頼出して」


「……柊が作ってくれるなら、やる。すぐ確認してくる!」



 あっという間に笑顔になって、一ノ瀬は他の受付係の子たちのところに走っていった。


 単純なやつだ。