音楽祭の前日なので、今日は午前中だけ授業があり、午後は歌の練習をして終わりだった。
 先生たちと音楽委員がホールに準備に行くから部活も休み。
 私は颯くんと手をつないで駅前のメックで喋っていた。
 周りには同じような人たちがたくさんいて騒がしい。

「莉子は、明日の朝も部活あるんだっけ?」
「うん、水やりだけね。顧問の先生が車を出してくれるから、ホールには直接行くよ」
「そっかあ。一緒に行きたかったなあ」
「帰りは一緒に帰れるよ」
「じゃあ駅前のゲーセンでプリクラ撮らねえ?」

 恥ずかしいけど、プリクラは撮りたい。
 それに、颯くんが撮りたいと言ってくれたことが嬉しい。

「プリクラってさ、一回しか撮ったことないから、莉子と撮るの楽しみ」
「撮ったこと、あるんだ?」

 聞き返すと颯くんは渋い顔になった。

「……姉貴に、連れ込まれて、1回だけ。……笑うなよ?」

 そう言って見せてくれたスマホの画面には、美少女が3人映っていた。
 その内の1人は、すっごい盛られてるけどメイサちゃんだ。

「これ、もしかして女装した颯くんと、お姉さん?」
「……うん」
「颯くんとお姉さん、そっくりだね……メイサちゃんも」
「うん……。なんつーか、顔が似てるって分かってるから、余計に付き合ってるとか言われると引くんだよね」
「みんな美人だねえ」

 「美人三姉妹」と言われたら、信じてしまいそうなくらい似ている。

「莉子?」
「ん?」
「あと、11日。俺も男だってしっかり思い知らせてやるから覚悟しとけよ」
「わ、わかってるよ、そんなの……」
「どうだかなー?」

 意地悪に笑う颯くんは、女の子でも、王子様でもなかった。