「柊! トリックオアトリート!」

「うわ、びっくりした」


 放課後、部活に行こうと立ち上がったら、隣の席の一ノ瀬に呼び止められた。


「お菓子ちょうだい。いたずらもさせて」

「ど、どっちかだよ。あ、お菓子ある。はい、飴」

「……ありがと」


 一ノ瀬はふてくされた顔で飴を開けて食べてる。

 飴の包みの裏を見て、目を丸くした。


「なんか書いてある」

「それね、占い。なんかいいこと書いてあった?」

「うん。好きな子と少しだけいいことがあるって」

「へえ……」


 それ、一ノ瀬は誰を思い浮かべたの?

 そんな嬉しそうに私の顔見ないでよ。

 期待しちゃうじゃん。


「ね、柊も言ってよ。トリックオアトリート」

「……トリックオアトリート……」

「俺、お菓子持ってないんだ。だから、いたずら、してくれていいよ」


 何それ。

 いたずらって、何すればいいのさ。


「えー……、あ、座って」

「うん。……なに……?」


 カバンに入っていたゴムで一ノ瀬の髪を左右に結ぶ。

 できあがった髪をスマホで撮って送る。


「いたずらしたよ」

「もう一生結んどく」

「いや、部活で邪魔でしょ」

「やだ!! このままにする!! 39日後、覚悟しとけよ!」


 一ノ瀬は顔を真っ赤にして教室を出て行ってしまった。

 えー……なにそれ……。