いつもなら、朝の水やりの途中か、校舎に向かうときに一ノ瀬が声をかけてくるのに、今日はそれがなかった。

 それどころか、朝のホームルームが始まっても隣の席は空のままだ。


「一ノ瀬は……あー、風邪で休みだ」


 先生が出席を取りながらそういう。

 風邪かあ。昨日は大丈夫そうだったのにな。

 連絡とかしたほうがいいのかな。

 ……別に彼女とかじゃないし。

 友達かどうかもよくわからない。


 もやもや悩んでいるうちに放課後になった。

 部活に行こうとカバンを持ち上げるのと同時にスマホが震える。


『あと43日! 柊は風邪引いてない?』


 私じゃなくて自分の心配しなよ。


「大丈夫。風邪?」

『うん。ただの風邪。でも、熱が高くて寝てろってさ』

「じゃあ、寝てて。おやすみ」

『柊の顔見たら一瞬で元気になるんだけど』


 ……もしかして、写真送れって言ってる?

 悩んでたら、結が横からのぞき込んできた。


「あ、一ノ瀬? すっかり正妻じゃん」

「そ、そんなんじゃないから!」

「莉子ち、写真撮ってあげる。ほら、笑って」

「む、無理……!」


 結が撮った写真を送ると、すぐに既読がついた。


『かわいすぎて熱ぶり返した』

「じゃあ消して、ちゃんと寝て」

『やだ! でも本物に早く会いたいから寝る。おやすみ』

「おやすみ」


 明日は、元気になってるといいね。

 心配とかじゃなく。

 普通に、クラスメイトとしてね!