部活が終わって、家に帰った途端にスマホが震えた。


『あと83日! 帰り、一緒に帰れなかったから、明日は待ってて!』


 ……ウザ。

 別に約束とかしてないし。

 どうしようかな。待たないって返していいかな。

 でも、それでやり取りが続いちゃうのも、面倒なんだよね。

 とりあえず部屋にスマホを置いて、晩ごはんを食べに行く。

 仕事から帰ってきたお兄ちゃんが、苺大福を買ってきてくれて嬉しい。



 気分がいいから、一ノ瀬にも返事しようかな。

 でも、なんて?


「……んー、困ったなあ」


 さんざん悩んで、結局「待たない」って返す。

 送った途端に既読がついた。


『初めて返事くれた』


「そうだっけ?」


『そうだよ。嬉しい』


「こんなことで?」


『こんなことじゃない。電話していい?』


「だめ」


『声聞きたくなっちまった』


「明日会うでしょ」


『待てない』


 一ノ瀬は、どんな顔でこんなことを言ってるんだろう。

 私はムスッとした、ぜんぜんかわいくない顔でスマホを睨んでる。


「寝る。おやすみ」


『おやすみ、また明日』


 そこは引くんだ。

 もうちょい粘るかと思った。


 ……粘ってほしかったわけじゃ、ない。