100日後、クラスの王子に告白されるらしい

 俺が柊莉子を最初に意識したのは、夏休みも半ばのことだった。

 サッカー部の合宿を終えて、久しぶりに学校に行ったら、一人の女の子が中庭で水をまいていた。


「……あれ、柊だっけ?」


 正直、そのときは何も思ってなかった。

 2年続けて同じクラスだし(莉子は今もそのことに気づいてないけど!)、この暑い中で一人で突っ立ってる女子がいたら、「何してんのかな?」って思う。


 その子が、ふいに振り向いた。

 でも、俺のことなんて全然気づいてなくて、隣の花壇に水をまき始めただけだ。

 自分で言うのもなんだけど、俺ってけっこうモテる。

 まあアイドル扱いされるだけで、別に告白とかはされないけど。

 体育とか部活のときにキャーキャー言われるくらい。

 だから、全然気づかれないのが珍しくて、思わず柊をじっと見た。


「……もしかして、柊ってけっこうかわいいな……?」


 真夏のクソ暑い中、柊は花壇に笑ってた。

 穏やかで優しくて、きっと「慈しむ」ってこういうのだろって思う眼差し。

 その綺麗さに、俺は一瞬で恋に落ちた。