朝、部活のために学校に行ったら校門の前に颯くんが立っていた。

 近づくと眉間にシワを寄せて私を真っ直ぐに見ている。


「莉子、おはよ。誕生日おめでとう」

「おはよう、颯くん。そのために待っててくれたの?」

「……ううん。告白するために待ってた。柊莉子、好きだ。付き合ってください」


 真っ赤な顔で、颯くんが手を差し出す。

 その手をそっと握った。


「……はい。私も一ノ瀬颯くんのことが好きです。よろしくお願いします」

「マジか……よかった……」


 颯くんの顔にやっと笑顔が浮かんで、同時にちょっと涙目になる。


「や、めちゃくちゃ緊張した。心臓痛えよ……」

「私もドキドキしちゃった。まさか朝一で来ると思わなくて」

「あはは、そうだよな」


 手をつないだまま、ゆっくり校門をくぐる。


「いや、タイミング悩んだんだけどさ、放課後だと、そのあと一緒にいられる時間短いじゃん? 朝一なら、今日一日彼氏彼女で過ごせるから、早い方がいいかなってさ」

「ふふ、そうだね」

「……莉子はさ、最初嫌がってたじゃん。俺がカウントダウンするの。いつから、俺のこと好きになってくれたの?」

「んー……、文化祭、楽しませてくれたときと、そのあと、映画の感想が納得しかなかったときと、私が勧めた本、面白いって言ってたときとか、かな」


 颯くんはニコニコしながら私を覗き込んだ。


「そっか。これからも楽しませるから、期待しといてくれ。そのゴムも似合ってる。ありがと、つけてきてくれて」

「うん。颯くんは、なんで私に告白しようと思ったの? 100日もかけて」

「言わなかったっけ? 夏休みに水やりしてる顔がかわいかったからだよ。めちゃくちゃ優しい顔してたから、俺のこともそんな顔で見て欲しかった。100日かけたのは、莉子が俺に興味ないのわかってたからね」

「興味、なさそうだった?」

「うん」