私はまた、本屋さんに向かっていた。
先日買った本の続編があると知ったので、買いに行こうと思っている。
全部読んだら、またシオン様に読んでもらおう。
そう思って街を歩いていたら、シオン様を見つけた。
隣には知らない女性がいる。
あれ? 今日は朝からクラウド様のお家に呼ばれたといって出かけていったのに。
どうして女性と一緒に街にいるの?
なぜか私の心臓がギュッとなる。
今までシオン様がこんな嘘をついたことなんてなかった。
いけないと思いながらも、私は後をつけていた。
二人が入ったのは、街でも人気の装飾店。
最新のデザインの物が多く揃っていて、若者に人気のお店だ。
私は外からガラス越しに様子をうかがう。
男性物を選んでいるみたい。
ネクタイやチーフ、帽子などをシオン様に合わせてみたりして楽しそうに選んでいる。
なに、あれ。
私だってあんなふうにお買い物したことない。
以前プレゼントを贈り合ったときは、別々に選んで贈りあったし。
まるで、本物の夫婦みたい。なんか、嫌だ。
クラウド様とシオン様が一緒にいる姿を見るのはすごく好きなのに、他の女性といるのは見たくない。
見たくないのに、見てしまう……。
すると後ろから知った声がした。
「ティア嬢?」
「あ……」
声をかけてきたのはクラウド様。
もしかして、これからシオン様と合流するのかな?
「あいつら、なにやってんだ?」
そういうわけではなさそうだ。
クラウド様も、お店で仲良く買い物をしているシオン様と女性に気付いて怪訝そうな顔をする。
でも、あいつらって言った?
「クラウド様、あの女性のことご存知――」
ご存知なのですか、と聞こうとしたとき、お店から二人が出てきた。
咄嗟にクラウド様と隠れる。
シオン様と女性はそのまま並んで歩いていく。
「行こうぜ」
「え?」
「気になるんだろ?」
躊躇するこなく後をつけていくので、私も続いた。
少し歩いたところで、シオン様と女性は近くのカフェへと入っていく。
クラウド様と私も入り、シオン様から死角になる席に座った。
会話は聞こえないけれど、二人は途切れることなく談笑している。
お買い物をして、カフェでお茶をして。これって、デートだよね?
シオン様のことがわからない。
あの女性とはどういう関係なんだろう。
「心配なのか?」
「え……?」
クラウド様がじっと私を見る。
いつもはあっけらかんとしてるけれど、今は真剣な表情をしている。
「二人が、何を話しているのかすごく気になります。クラウド様は気になりませんか?」
「気になるっちゃ気になるな。でも、ティア嬢が心配するようなことはないから気にするな」
慰めて、くれてる?
でも、心配するようなことはないと言っても、今こうして女性と二人で過ごしているという事実は変わらない。
「あの女性がシオン様とどういう関係か知っているのですか?」
「あれは、俺の見合い相手だ」
「え?! お見合いの相手?」
先日広場で話していた女性と違う人だ。
新たなお見合い相手ということだろうか。
でも、どうしてクラウド様のお見合い相手とシオン様が二人でデートなんてしているの?
余計にわからない。
「どういうことですか?!」
「俺だって知らねえよ。だから尾行してんだろ」
たしかに……。
クラウド様も、二人の様子を気にしている。
黙って見ていると突然、女性が目に涙を浮かべ始めた。
一生懸命なにかを言っているが、何を言っているかはわからない。
ハンカチを握り締め、必死に訴えかけている。そして、深く頭を下げた。
シオン様はなだめるように優しく肩を叩き何かを言うと、女性はパッと顔を上げる。シオン様の手を握り、嬉しそうに微笑んだ。
どういう状況? いったい何の話をしているの?
気になる。でも、いきなり目の前に飛び出すわけにもいかない。
「あいつ、変なこと言ってないだろうな……」
クラウド様は呆れたようにぼそりと呟いた。
その後は視線を逸らし、静かにコーヒーを飲んでいる。
会話が聞こえるわけでもないし、ただ二人の様子を見てモヤモヤして。
私、なにやってるんだろう。
今さら自己嫌悪に陥ってくる。
「クラウド様は、あのお見合い相手の方もお断りするのですか?」
「もう随分前に断ってるんだけどな」
「そうなのですか?」
あの女性は三人前のお見合い相手で、いつものように断ったそうだが、先日のお見合いを断ってすぐ、もう一度申し込みがあったそうだ。
クラウド様のお父様は早く結婚してほしいと思っているので、再度の申し出を喜んで受けたらしい。押しの強い相手なら、クラウド様も折れるのではないだろうかと。
「ったく、もの好きだよなー」
というか、それってクラウド様のことをとても慕っているということでは?
数多の女性を泣かせてきて、クラウド様って罪な人だな。
もういっそのこと、シオン様との関係を公にしたほうがいいのでは?
無駄に悲しい思いをする女性は減るはず。
いや、それは私の勝手な考えだ。お二人にだって立場がある。
私が安易に口にしていいことではない。
でも、クラウド様の口から聞いておきたいことがある。
「そんなにお見合いをお断りするということは、他に好きな人がいるということでしょうか」
「…………そうだな」
えっ!!!! 認めた!?
聞いてはみたものの、そんなにあっさり答えてくれるとは思っていなかった。
「その方と一緒になりたいと思っているのですか?」
「それはないな。俺は一人でいい。仕事だけやってればいいんだ」
自分に言い聞かせているようだった。
シオン様とは一緒になれないと思っているのだろう。
そもそも、私という存在が邪魔をしているんだ――
「君たちはさ、さっきから二人でなにしてるの?」
気づいたら、シオン様が目の前に立っていた。
女性はもう帰っているようだ。
「それはこっちのセリフだろシオン。俺の見合い相手と何してたんだよ」
鋭い視線をぶつけ合う二人。
なんか、思っていた以上に険悪な雰囲気になってしまった……。
先日買った本の続編があると知ったので、買いに行こうと思っている。
全部読んだら、またシオン様に読んでもらおう。
そう思って街を歩いていたら、シオン様を見つけた。
隣には知らない女性がいる。
あれ? 今日は朝からクラウド様のお家に呼ばれたといって出かけていったのに。
どうして女性と一緒に街にいるの?
なぜか私の心臓がギュッとなる。
今までシオン様がこんな嘘をついたことなんてなかった。
いけないと思いながらも、私は後をつけていた。
二人が入ったのは、街でも人気の装飾店。
最新のデザインの物が多く揃っていて、若者に人気のお店だ。
私は外からガラス越しに様子をうかがう。
男性物を選んでいるみたい。
ネクタイやチーフ、帽子などをシオン様に合わせてみたりして楽しそうに選んでいる。
なに、あれ。
私だってあんなふうにお買い物したことない。
以前プレゼントを贈り合ったときは、別々に選んで贈りあったし。
まるで、本物の夫婦みたい。なんか、嫌だ。
クラウド様とシオン様が一緒にいる姿を見るのはすごく好きなのに、他の女性といるのは見たくない。
見たくないのに、見てしまう……。
すると後ろから知った声がした。
「ティア嬢?」
「あ……」
声をかけてきたのはクラウド様。
もしかして、これからシオン様と合流するのかな?
「あいつら、なにやってんだ?」
そういうわけではなさそうだ。
クラウド様も、お店で仲良く買い物をしているシオン様と女性に気付いて怪訝そうな顔をする。
でも、あいつらって言った?
「クラウド様、あの女性のことご存知――」
ご存知なのですか、と聞こうとしたとき、お店から二人が出てきた。
咄嗟にクラウド様と隠れる。
シオン様と女性はそのまま並んで歩いていく。
「行こうぜ」
「え?」
「気になるんだろ?」
躊躇するこなく後をつけていくので、私も続いた。
少し歩いたところで、シオン様と女性は近くのカフェへと入っていく。
クラウド様と私も入り、シオン様から死角になる席に座った。
会話は聞こえないけれど、二人は途切れることなく談笑している。
お買い物をして、カフェでお茶をして。これって、デートだよね?
シオン様のことがわからない。
あの女性とはどういう関係なんだろう。
「心配なのか?」
「え……?」
クラウド様がじっと私を見る。
いつもはあっけらかんとしてるけれど、今は真剣な表情をしている。
「二人が、何を話しているのかすごく気になります。クラウド様は気になりませんか?」
「気になるっちゃ気になるな。でも、ティア嬢が心配するようなことはないから気にするな」
慰めて、くれてる?
でも、心配するようなことはないと言っても、今こうして女性と二人で過ごしているという事実は変わらない。
「あの女性がシオン様とどういう関係か知っているのですか?」
「あれは、俺の見合い相手だ」
「え?! お見合いの相手?」
先日広場で話していた女性と違う人だ。
新たなお見合い相手ということだろうか。
でも、どうしてクラウド様のお見合い相手とシオン様が二人でデートなんてしているの?
余計にわからない。
「どういうことですか?!」
「俺だって知らねえよ。だから尾行してんだろ」
たしかに……。
クラウド様も、二人の様子を気にしている。
黙って見ていると突然、女性が目に涙を浮かべ始めた。
一生懸命なにかを言っているが、何を言っているかはわからない。
ハンカチを握り締め、必死に訴えかけている。そして、深く頭を下げた。
シオン様はなだめるように優しく肩を叩き何かを言うと、女性はパッと顔を上げる。シオン様の手を握り、嬉しそうに微笑んだ。
どういう状況? いったい何の話をしているの?
気になる。でも、いきなり目の前に飛び出すわけにもいかない。
「あいつ、変なこと言ってないだろうな……」
クラウド様は呆れたようにぼそりと呟いた。
その後は視線を逸らし、静かにコーヒーを飲んでいる。
会話が聞こえるわけでもないし、ただ二人の様子を見てモヤモヤして。
私、なにやってるんだろう。
今さら自己嫌悪に陥ってくる。
「クラウド様は、あのお見合い相手の方もお断りするのですか?」
「もう随分前に断ってるんだけどな」
「そうなのですか?」
あの女性は三人前のお見合い相手で、いつものように断ったそうだが、先日のお見合いを断ってすぐ、もう一度申し込みがあったそうだ。
クラウド様のお父様は早く結婚してほしいと思っているので、再度の申し出を喜んで受けたらしい。押しの強い相手なら、クラウド様も折れるのではないだろうかと。
「ったく、もの好きだよなー」
というか、それってクラウド様のことをとても慕っているということでは?
数多の女性を泣かせてきて、クラウド様って罪な人だな。
もういっそのこと、シオン様との関係を公にしたほうがいいのでは?
無駄に悲しい思いをする女性は減るはず。
いや、それは私の勝手な考えだ。お二人にだって立場がある。
私が安易に口にしていいことではない。
でも、クラウド様の口から聞いておきたいことがある。
「そんなにお見合いをお断りするということは、他に好きな人がいるということでしょうか」
「…………そうだな」
えっ!!!! 認めた!?
聞いてはみたものの、そんなにあっさり答えてくれるとは思っていなかった。
「その方と一緒になりたいと思っているのですか?」
「それはないな。俺は一人でいい。仕事だけやってればいいんだ」
自分に言い聞かせているようだった。
シオン様とは一緒になれないと思っているのだろう。
そもそも、私という存在が邪魔をしているんだ――
「君たちはさ、さっきから二人でなにしてるの?」
気づいたら、シオン様が目の前に立っていた。
女性はもう帰っているようだ。
「それはこっちのセリフだろシオン。俺の見合い相手と何してたんだよ」
鋭い視線をぶつけ合う二人。
なんか、思っていた以上に険悪な雰囲気になってしまった……。



