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龍真がその屋敷に到着したとき、簡易結界の中はアメーバのようなもので半分くらい満たされていた。
「こんなことって」
植田はぼうぜんとつぶやく。彼はあやかしをろくに見たことがない。その上こんなものは初めてだった。
龍真がまゆを寄せたとき、二階のまどに人影が映った。
「結珠!」
思わず叫ぶが、彼女には届かない。
結珠はタマとともにまどの外に出て、タマを屋根の上に放り投げた。続いて雨どいを登り始める。
「夜刀」
龍真が呼ぶと、彼の影から真っ黒な龍が現れた。
植田は初めて見る彼の使い魔に驚き、しりもちをつく。
黒龍の全長は二階建ての家よりも高く、そびえるように空中に浮いている。
「俺を乗せて結界の中へ入ってくれ。結界は破った直後に張り直す」
「承知」
短く答え、彼のために頭を下げる。
彼が首にまたがると、黒龍は軽々と結界の真上に飛んだ。
龍真がスマホで結界の部分解除をタップし、上部を破る。部分解除は上級退魔師のアプリにしか入っていない機能だ。


