「じゃあ、早速行こうか」

 そうだ、買い物に付き合うという名目だった。エイハちゃんの誕生日プレゼントという事で。

 屋根付きの商店街にはいろんな店が並んでる。それがこの町が住みやすい点でもある。今日はそれを痛感した。

 最初はアクセサリー屋さん。女性客が多い中、先輩はちょっと困ってるみたい。あれでもない、これでもない……いろいろ見回って

 みたけど、今一、ピンと来ない。で、次に陸上部で使うタオルとか、デオドラント製品を見回ってみた。でもさ、誕生日にそんな部

活用品を送られても困るんじゃないかなあ。もっと走れと言われてるみたいで。

 うーん困った。

 =お姉ちゃん、どうしたらいいと思う?=

 =私じゃなくて、彼と相談しなさいよ=

 =むう=

 そのとき、私の肩からカーディガンがずり落けそうになっていたらしく、

 先輩が何のためらいもなく、そっと直してくれた。

 あ、だめだ。こういうの、好きになっちゃうやつだ。

 「…………」

 仕方がない。

 「……先輩は何がいいと思いますか?」

 「そうだね。そのコは部活以外に何か興味のある事があるのかな?」

 「…………えーっと……」

 何だろう。そうだ!

 「猫を飼ってたかも」

 「じゃあ、決まりだね」

 ペットショップに直行。

 店内にはたくさんのワンちゃんと猫ちゃん。あと、よく分からないペットグッズ多数。

 「これがいいんじゃないかな?」

 先輩はちっちゃな布団みたいな物を指さした。

 猫用の布団……こんなに本当の布団そっくりでなくてもいいような……。

 「ふふ……」

 布団から顔を出してる猫ちゃんを想像したら思わず笑ってしまった。先輩も笑ってる。

 「じゃあ、これにします」

 思っていたほど高くなかった。綺麗にラッピングしてもらって、最初のミッションは終了。

 店を出て、商店街を並んで歩く。

 休日の人通りはいつもより多く、肩がぶつかりそうになったとき、

 先輩が自然に私の背中へ手を回した。

 ほんの数秒だったけど

 「大丈夫?」

 「……はい」

 声がちょっとだけ上ずったのは、気づかれてないといいな。

 「ちょっと寄ってきませんか?」

 珈琲ショップに入る。上にあるメニュー表を見てもサッパリだったけど。

 =グアテマラコーヒーのグランデにしなさい。あと店内で=

 アドバイス通りに注文したら。

 「え?」

 トレーに出てきたのは超巨大なカップと、並々と注がれた珈琲。

 しかも店内でお召し上がり。これ全部飲めるの?

 やられた……。

 「紅奈ちゃんて、結構、大きいの頼むんだね」

 「えっと……えへへ……」

 もう笑うしかない。