初日は短いホームルームとクラス分けの説明だけで、先生とクラスメイトとの顔合わせが目的だったのかも。周りの人達はあちいこ

 っちでお喋りしてるグループがあるけど、私は知り合いがいないので、一人ぽつんと座ってる。

 一人でいる時は何とも思わないけど、大勢の人の中にいる時は、すっごい孤独を感じる。嫌とかそういうわけじゃないんだけど。

 =お姉ちゃんは、こんな時、どうしてたの?=

 私から聞いてみる。これは心の中の私の呟き。

 =そうね。クラスに知り合いはいなかったけど、別クラスにはいたから、そっちに顔出してた。紅奈はいないの?=

 「うーん……」

 思いつかない。いつもおまけの様にお姉ちゃんとか、紗久耶ちゃんの後ろについていってて、話してる相手とたまに相槌をうった

 り、笑ったりするぐらいで、その人がどこの誰かはさっぱり覚えてない。

 =中一の時、同じクラスだったコがいるよ=

 =え? どこ?=

 =ほら、紅奈の右後ろ=

 「…………」

 びっくりして後ろに急にグリ!って振り向いたものだから、真後ろにいた男子がビクっとして驚いてた。

 「あ……すみません」

 ヘヘ……と笑ってごまかして改めて後ろを振り返る。

 ショートカットの小柄な女性徒。見覚えがあるようなないような。

 誰だっけ?

 =竹中詠葉ちゃん。陸上部だったコよ。紅奈も何度か話した事があるじゃないの=

 =よく覚えてるね=

 さすがはお姉ちゃん。でも私の中では、彼女はお初な人なんだけど。

 =さ、立って。エイハちゃんに挨拶に行くの=

 =え?=

 いや、それはちょっと……初体面の人と何を話せば。

 =いいからいいから=

 「…………」

 こうなるとお姉ちゃんは何も聞いてくれなくなるのを知ってるから、私は渋々と竹中さんの席に近づく。

 「あ……あの……私……昔々……」

 「?」

 しまった。緊張のあまり、昔話の語り口みたいになってしまった。エイハちゃんは首を傾げてる。私の事も憶えていないみたい。

 「…………」

 「…………」

 しばらく無言の間があって。

 「じゃ、じゃあ、そういう事で……」

 笑っていつものように逃げ出そうとしたけど。

 =しょがないなあ=

 =!=

 突然体が動かなくなったの。目とか耳とか……五感はあるんだけど、それだって、どこを見るとか、体の自由が全くきかない。

 「こんにちは、竹中さん」

 =え?=

 私が急に勝手に話しだしてる。うん、私は何も言ってないよ。言ってるけど。

 「私、中一の時、同じクラスだった、柊紅奈」

 「え? ああそうか、思いだした。そう言えばいたような気が……」

 エイハちゃんも記憶を手繰っているみたいだけど、私は目立たなかったからなあ。

 「また一緒のクラスになったみたい。これからよろしくね」

 ニコって笑って私は手を出してる。もちろん、それは私の意志じゃないんだけど。

 「私こそ!」

 エイハちゃんも笑って握り返してくれたとき、その体温があったかくて、こうして握手できて良かったって、ほんとに思ったの。