「……えっと、たまたまで……まぐれと言うか……はは」

 「そうなんだ」

 それで納得してくれたなら、先輩も相当、天然だと思う。

 まだ首を傾げてる間に、私は騒がしいこの場所から離れた。

 もう! 結局、UFOキャッチャー出来なかったじゃない。

 次に目指す先は最終目的地の街外れの岡にある展望台。そこから街が一望できる。

 ロマンチックな場所。

 林の道を先輩と並んで歩く。木漏れ日が、先輩の横顔をやわらかく照らしていた。

 並んで歩けるだけで、今日はもう十分幸せかもしれない。

 でも、それだけじゃ……足りない。

 この気持ちはちゃんと伝えたい。

 「‥‥‥むう‥」

 何だかドキドキしてきた。

 さっきまでの溶けたチョコレートの私とは違う。

 一世一代の私の告白。絶対に成功させたい! 失敗は許されない!

 =大丈夫。もっと自信をもって=

 =そう言われても……=

 =言ったでしょ、紅奈はね、この完璧超人、柊翔子の妹なんだって=

 =うん=

 =……もう時間がないの……だからこれだけは言っておくけど……=

 「……時間?」

 何の事?

 =紅奈、あなたはやれば出来る子! 足りないのはちょっとの自信だけ! それは忘れないで!=

 「……うん」

 =……じゃあ…………さよ……なら……=

 「…………」

 お姉ちゃんはそうやって傍観するつもりらしいけど……

 =でも、私がどうかしてしまったら、お姉ちゃん、また変わってね=

 一応、言っておく。

 そんな保険もあるから、失敗はしようがないんだけど。

 凄い時間がかかったようで実は数分で到着した。

 林の小道の奥、そこからベンチが何個かあって、絶好の展望スポットになってる。都合の良い事に他に誰もいないみたい。

 今だ、今しかない!

 「あの……先輩」

 木製の柵に手をかけてた先輩に、私は声をかけたの。

 「どうしたの?」

 「あの……せ……先輩の事が……その……す」

 「……す?」

 「すすすす……」

 「…………?」

 す……その先の言葉がどうしても出てこない。