そう言う先輩はなんか普通のサイズ。なんだかこれだと私っていつもコーヒー、がぶ飲みしてるって思われるんじゃ……。
 
 そうして私は、先輩が飲み終わった後も延々と飲み続ける事に……げふ。
 
 用意していた会話のネタが尽きてどうしようって感じ。
 
 何か話題を探さないと……。間が持たないよ……。
 
 えっと……。
 
 「先輩って、猫に詳しいんですね」
 
 「うん、前に飼ってたからね」
 
 前?……と、いう事は今は飼ってない。つまり死んじゃったか、いなくなっちゃったか……この話題のチョイスはミステイクだったか。
 
 「子供の時から飼ってたんだけど、中学二年の時に死んじゃってね。しばらく立ち直れなかったよ」
 
 「長生きだったんですね。そんなに大事にされて幸せだったと思います」
 
 「…………」
 
 先輩が黙ってしまった! 私、何か変な事を言った?
 
 「また他の猫を飼えばいいとか、すぐに忘れるよとか……そんな事を言ってくる奴もいたけど……紅奈ちゃんは本当に優しいね」
 
 「……いえ」
 
 何だけ妙な空気になってしまった。
 
 時間が押してきたので、まだ飲み終わってないけど店から出る事にした。
 
 私も先輩も黙って通りを歩いていく。
 
 そうだね。ペットの猫ちゃんは家族なんだから、かけがえの無い存在。心無い言葉を言うような人たちに先輩は傷ついたんだろうね。
 
 そんな言葉に傷つく先輩の方がずっと優しいよ。
 
 「…………」
 
 私は歩きながらスカートの裾をぎゅっと握りしめてた。
 
 私は先輩が好きなんだ。って言うか、もっと好きになった!
 
 まだライクとラブの中間だけど、ラブ寄りだよこれはもう!
 
 お姉ちゃんありがとう。先輩と引き合わせてくれて。
 
 =どういたしまして=
 
 「…………」
 
 そうか筒抜けだった。
 
 お店を出て、しばらく商店街をぶらぶらと歩く。こうしてるだけでも立派なデート。別に何をするわけでもないけど。
 
 ゲームセンターの前まで来ると、そこで何かの人だかり。
 
 近くまで行ってみると、マイクを持った人が、大きな声で何かを言ってる。ゲームの大きな機械に向かい合って座ってる人が、ガチ

ャガチャと音をたててゲームしてた。

 「格闘ゲームかー」

 先輩が目を輝かせてる。

 「…………」

 私はどうもピンと来ない。

 画面上で、キャラが殴り合ってるイメージで、レバーを色々いれると技が出るみたいな。

 奥のUFOキャッチャーは得意なのよ、意外にも。唯一、お姉ちゃんより上手かったんだけど、そういう理由で部屋の中には、無数

 のぬいぐるみが……。

 もう置くとこなかったので、お母さんは、枕元に置いたりする。何だか茶色いぬいぐるみの熊が夢に出てきそう(かわいいんだけど

 ね)。

 「あれ?」

 何て事を考えてる間に、いつの間にか先輩はゲーム台の椅子に座ってる。

 「さあ、新たなチャレンジャーが現れました! 果たして彼は最強を打ち破れるのか!」

 「やれー! やっちまえ!」

 「俺たちに勝つ奴なんているわけないだろ!」

 後ろで見ていたほとんどが、対戦相手の仲間みたい。応援と言うより、野次が飛んでくる。何か嫌な感じ。

 画面の中のキャラが、くるっと身をひるがえして相手の攻撃をかわす。

 ああ、さっき体育で見たスタートフォームと同じで、形さえ分かれば真似できる気がする。

 ゲームの技だって、目で見て覚えれば……。