街からそれほど離れているわけではないけれど、近辺に住宅がないからか、人気(ひとけ)がない土地。

 大きな倉庫の壁にはスプレーで落書きがされていたり、派手なバイクが乱雑(らんざつ)()まっていたり…。

 近づいてはいけないと一目でわかる雰囲気(ふんいき)に、入り口へと近づく一歩が踏み出せず、立ち止まってしまった。




「なんだおまえ?」




 怖気(おじけ)づいて、やっぱり帰ろうかな、と考えたとき、うしろから知らない男子の声が聞こえて、ビクッと肩がはねる。

 おそるおそる振り返ると、私のうしろには、いつも“不運”を運んでくるような、ガラのわるい男子が数人立っていた。




「あ、あの…」


「あん?女みてぇな声だな」


「…っ」




 ハッとして両手で口を押さえる。

 声のことまでは、考えてなかった…!

 どうしよう、男の子っぽい声なんて出せないよ…。