【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―



「はははっ、見たか?あの一改が赤い顔してるぜ」


「総長、あんまりいじったらあいつキレるぞ~?」


「そーそー、ひねくれ者におとずれた春なんだから、そっと見守っといてやろうぜ?」


「おまえら全員だまってろ!」




 一改くんの肩から顔を出して、あの人がValor(ヴァラー)の総長なんだ、とナイフを蹴飛(けと)ばしたり、私に声をかけてくれたりした人を遠目に見る。

 やっぱりみんな仲良さそうだな、と思いながら、舌打ちをこぼして目をつぶる一改くんを見上げた。

 Valor(ヴァラー)の人たちにイラだってたみたいだけど、一改くんは私の頭をそっとなでてから、私を離す。




「あー…家まで送ってく」


「あ、ありがとうございます…」


「ん。…あとさ、一個言いたいことがあんだけど」


「はい…?」