【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―



「…!?なんだおまえら、また調教されたいのか!?」




 顔を動かさず、視線を可能なかぎりうしろに向けると、首輪をつけた女の子たちがMalice(マリス)の総長の腕にしがみついていた。

 視界のはしを横切るなにかに気づいて、一改くんに意識をもどすと、頭上でゴンッというにぶい音がして、前に腕を引かれる。

 引っぱられるまま、Malice(マリス)の総長から離れて数歩前進した体が、目の前にせまった一改くんの右腕に抱きとめられた。




「…っ」


「大丈夫か」




 ささやかれた声に対して、一瞬固まったあとにコクコクうなずいて答えると、一改くんはそっと私を離し、Malice(マリス)の総長に近づく。

 力が抜けて座りこみながら振り向けば、女の子たちを振りはらって、ナイフを振りまわしているMalice(マリス)の総長に、一改くんが なぐりかかった。