「…こんなところに逃げ出していたやつがいたか」




 無表情で見下ろしながら、Malice(マリス)の総長が私に手を伸ばす。

 バクバクと鳴る心臓の音が私に“逃げて”と言っているのに、こわばって動けないまま、私の腕はつかまれてしまった。

 そのまま強引に引っぱられて、力の抜けた手から落ちたウィッグ一式が、踏み出した足の下敷きになってパキッと小さな音を立てる。




「…」




 首輪をつけられている女の子たちの暗い目が、急に合流した私を見つめた。

 おたがい、Malice(マリス)の総長に引っぱられて歩かされているのに、なにもできない。

 ただ離れていく倉庫を見て、気持ちがあせるだけ。


 このまま、Malice(マリス)の総長が1人で逃げ出して、私たちは“コレクション”として彼に(とら)われるの?