【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―



「急げ」


「「…」」




 近づく足音と一緒に、見える範囲(はんい)に現れたのは、倉庫の裏手側から来たMalice(マリス)の総長と、くさりつきの首輪をつけられた女の子たち。

 “コレクション”を連れて、逃げてきたんだ…。

 Malice(マリス)の総長と女の子たちが早足でこちらに近づいてくるのを見た私は、緊張(きんちょう)して、ひざを抱える腕に力をこめてしまった。


 ジャリ、と。

 私の体に引き寄せられた自分の足元から音が鳴って、目の前を通過するところだったMalice(マリス)の総長がこちらを見る。