【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―



「もう、見て見ぬフリは…やめるってことだ!」




 黒髪の男の子は そうさけぶと、左腕を引いて、ナイフを持った“総長”の手を()り飛ばした。


 ――降りかかる“不運”は、ただ耐えるのがあたりまえだと思っていた。

 ――だから、だれかが体を張って助けてくれるなんて、考えたこともなくて。


 キッと、するどく私の横をにらんだ男の子は、私の体を押さえつけている2人になぐりかかる。




「っ、てめぇ!」




 男の子に反撃(はんげき)するために、左右の2人は私から離れた。

 解放された体をもてあまして、雨つぶを受けながら立ちつくしていると、男の子が4人の男子にかこまれながら、澄んだ目を私に向けてさけぶ。