【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―

 左右に分かれて、壁ぎわに沿うように進む彼らのうち、こっちに来たグループと目が合った。




「…!」


「え…っ」




 先頭の男子が眉根を寄せ、こぶしをにぎりながら私のもとへかけ寄って来るのを見て、なぐられる!とギュッと目をつぶる。




「待て!こいつには話がある」




 覚悟(かくご)した痛みの代わりに、私の耳に届いた声を聞いて、ハッとまぶたを開いた。