【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―



「…どうして、変わったんですか?」


「今の仲間に…しつこいくらい、説得されたんだ」




 今の仲間…Valor(ヴァラー)、が。

 視線を前にもどした一改くんの横顔を見つめて、あのとき一改くんに助けてもらえたのは奇跡(きせき)だったのかな、と目を細めた。

 視覚的なまぶしさは感じないはずなのに、なんだか一改くんがまぶしく見える。


 胸もドキドキと音を立てていた。




「…なんでこんなこと、べらべら しゃべってんだろうな」




 独り言のようにつぶやいた一改くんは、それから口を閉ざして、道を尋ねる目的以外で、私と言葉を()わさなくなった。

 となりにいる一改くんの気配を感じながら、無言で歩いているうちに、あっというまに家に着く。