【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―



 ビクッと肩がはねるのを感じながら、足を止める。

 もう…気づかれちゃった…?

 息を殺して、うつむいたまま背後の気配(けはい)を意識すると、一改くんの声が続いた。




「あんた、1人か?ここら辺には女をねらって、わるさをしてるやつがいる。遅い時間は特に、女1人で出歩かないほうがいい」




 …正体に気づかれたわけじゃ、なさそう?

 ホッと肩を落として、私は「は、はい…」と返事をしてから、また急ぎ足で歩き出す。

 今は一刻(いっこく)も早く一改くんから離れたかったのに…グッと、うしろから二の腕をつかまれて心臓がはねた。




「聞いてなかったのか?女が1人で出歩かないほうがいい。家の近くまで送っていく」


「え…?」