【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―



 涼やかな黒髪に、切れ長の瞳の、ととのった顔立ち。

 私の目に焼き付いたまま離れない、恩人…一改(いっかい)くんが、なぜか今、私の目の前に立っている。

 どうして一改くんがここに、と動揺(どうよう)していたら、一改くんはパッと私の肩から手を離した。




「こ、ここに男が入っていったと思うんだが…知らないか?」


「…!」




 もしかして、私を追ってきた…の…!?

 じっくり見られたら気づかれちゃうかも、と思って、顔をそらしながら、気持ち高めの声で「い、いえ…」と答える。

 正体に気づかれる前に立ち去ってしまおうと、それからすぐ、顔をうつむけた状態でコンビニの出入り口を目指した。




「待て」


「っ…」