【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―

――薄葉(うすば)かすみ視点――


 万が一にも男装姿で帰って、Malice(マリス)の人たちに家の場所を知られないよう、念を入れてコンビニのトイレで男装を解いた。

 外したウィッグと、自前の髪をまとめていたウィッグネット、それから なべシャツを、ジーパンのポケットに入れていたエコバッグにしまう。

 (そな)えつけのかがみを見ながらセミロングの髪をととのえてトイレを出ると、雑誌コーナーにはお客さんが1人いるようだった。


 こっちに向かってくるその人から視線を遠ざけて、左側の商品だなを見ながらすれちがおうとしたら、ポンと肩をつかまれる。

 また“不運”が…?とあきらめの気持ちで横に来たお客さんを見ると、彼も横目に私を見て。

 パチッと視線が(まじ)わった瞬間、なぜかおたがいに――目を見開いた。




「「…え?」」