【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―

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――反町(そりまち)一改(いっかい)視点――


 人通りが減った夜道を歩いていると、ズボンのポケットに入れていたスマホが振動する。

 スマホを取り出して、着信が来ているのを見た俺は、画面を1回タップしてから耳にスマホを当てた。




「なんだ」


〈一改、もうパトロールの時間だぞ?おまえどこにいるんだ?〉


「1人でしてる」


〈はぁ!?おまえはまたそうやって単独行動をして!一匹オオカミもたいがいにしろ、一改がMalice(マリス)にいたことなんてだれも――〉



 ガミガミとうるさく説教する声を聞き流しながら、角をまがって向かいの歩道に出てきた人影に視線を向ける。

 コンビニからもれる明かりに照らされた女みたいな顔は、夕方俺をおそってきたMalice(マリス)の1人とおなじものだった。


 あいつは…あのときMalice(マリス)のやつらに肩貸してた、Maliceっぽくねぇやつ…?