【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―

 どうしたらいいの、と思いながら、私は胸にうずまく感情につられて、視線を落とした。




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「はぁ…」




 すっかり黒く染まった空の下、私は街灯(がいとう)に照らされた道を1人でとぼとぼと歩き、こらえていたため息をつく。

 今日はなんとか倉庫を抜け出してこれたけど…。

 成り行きでMalice(マリス)のメンバーってことになっちゃったし、この格好(かっこう)のままじゃ、Valor(ヴァラー)の倉庫に行ったって、一改くんに話を聞いてもらえないよね…。


 私はただ、一改くんにお礼を伝えたいだけなのに…。

 アスファルトの地面に視線をとめて歩きながら、あぁでも、と今日見たものを思い返す。

 あのときの傷…ふさがったみたいで、よかった。


 一改くん、元気そうだったし、と視線を上げて、目的のコンビニを見つけると、私は駐車場を照らす明るい電灯にさそわれるように、コンビニへ入った。