「あの、さっきの“一改”っていう人は、いったい…?」
「チッ、裏切り者だよ。総長の弟のくせして、総長にさからって、うちからValorにくら替えしやがったクソ野郎だ」
「くら替え…って、MaliceからValorに移ったってことですか?」
じゃあやっぱり、前はMaliceのメンバーだったの?
それに一改くん、あの“総長”の弟…なんだ…。
しゃがみこんで、茶髪の男子の顔を見ると、「そーだよ」とイラついた声が返ってくる。
「だから、あいつだけは絶対にぶっ殺さなきゃなんねぇ。おまえもただ棒立ちで見てんじゃねぇぞ」
キッと私をにらんで、茶髪の男子は私のほおを手のひらで ぶった。
パンッとひびいた高い音を耳にしながら、ヒリヒリと痛むほおを押さえて、眉をひそめる。
私は一改くんに会いに、ここへ来たのに…一改くんがもうここから抜けて、敵対チームに行ってたなんて…。



