「あ、あの…あなたに、伝えたいことが…」




 なんとか発した声は、みっともなくふるえている。

 お礼、あのときのお礼を、と()いた気持ちは、彼の冷たい一言で切り捨てられた。




Malice(マリス)戯言(ざれごと)に耳を貸す気はない」


「っ…」




 わかっていた、今彼が私に向けている目は、あのときとは ちがって、自分の敵に向けるきびしいものだって。

 せっかく会えたのに…今の私には、彼にお礼を伝えることなんてできないんだ。

 私は唇をかんでうつむく。




「…ごめん、なさい」


「…?」




 若干(じゃっかん)の痛みが残る肩から手を離して、私は地面にたおれ()している茶髪の男子に近づいた。




「あの、大丈夫ですか…立てますか?」


「うぅ…」


「…」