「いい顔だ…大人しいのも気に入った」
あごをつかまれて、わるだくみをしているような、薄ら笑いを浮かべたリーダー格の人にしげしげと顔をながめられても、私は無感情だった。
幼いころから、ずっと。私は運がわるかった。
薄葉かすみという名前のせいか、“幸薄そうだよね、薄葉だし、かすみだし。顔もそんな感じ”と言われたことも、数えきれず。
クラスでいじめが起これば、そのターゲットになるのは かならず私だった。
「だが、まずは調教だな。おい、押さえておけ」
「うす」
花の高校生になったところで、そんな日常は変わらない…。
それは、わかっていた。



