【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―



 あの切り傷の痕は…私を助けてくれた、あのときの…!?




「らぁぁ!」




 声をあげて、茶髪の男子が彼になぐりかかって いったことに気づくと、ハッと息を飲む。

 思わず前に伸ばした手は宙をつかむだけだったけど、黒髪の男の子は せまるこぶしを()けて、逆に茶髪の男子をなぐり返した。




「ぐっ…!ぼさっとしてんな新入り!おまえもこいつをぶちのめせ!」




 一撃をもらったお(なか)を押さえながら、茶髪の男子が私に怒鳴る。

 でも、あの男の子に暴力を振るうなんて、私には…。

 半歩下がって眉を下げると、他のMalice(マリス)の人たちが2人同時に黒髪の男の子を攻撃した。




「あ…っ」