【短】谷底のカスミソウ ―Valor VS Malice―



「あ、あの…あの子たちは…?」




 思わず近くにいる茶髪の男子に(たず)ねると、「あん?」とだるそうな声が返ってきた。




「あぁ、総長のコレクション。近づくのはいいが、手は出すなよ。総長に怒られっからな」




 こ…コレクション…!?

 なにそれ…と思いながら、壁ぎわに点々と散らばっている女の子たちを見ていると、比較的(ひかくてき)入り口に近い位置にいるポニーテールの子が顔を上げる。

 希望を失ったような、暗い目と視線が(まじ)わって、自然と眉が下がった。


 ずっと拘束(こうそく)されてるのかな…?かわいそう…。

 そう思っても、私にできることなんてないから、ただ彼女に同情の視線を送っていたら、倉庫のなかが ざわっとさわがしくなる。