――降りかかる“不運”は、ただ()えるのがあたりまえだと思っていた。

 パチパチとカサに当たる雨音を聞きながら、毎日往復する、駅から家までの道を半分ほど進んだころ。

 肩からずり落ちそうになったスクールバッグのヒモを肩の上にもどすと、また(・・)“不運”に出くわした。




「この女、連れて行け」


「うす、総長」


「え…?」




 向かいから歩いて来た、男子5人の集団。

 先頭に立っている、特に体格のいい人が命じると、私は彼らに腕をつかまれて、人気のない路地裏へと連れこまれた。

 “総長”…昔、中学校でわるいうわさを聞いた、Malice(マリス)っていう暴走族の人たちかな、とぼんやり考える。


 理由もわからず、人に害をあたえられることには なれている。