手を握ってくれたあなたともう一度


村から出て森の中に入ったリアラ。
幸いにもまだ妖怪には出くわしていない。

時折、耳を塞ぎたくなるような音が聞こえるがそれが妖怪の声なのか何なのかは分からなかった。
今はトキの救出だけがリアラの足を動かした。

「あの辺りかな」

確信がない中、恐る恐る前に進む。
水が流れる音がするから川が近くにあるのかもしれない。

「この辺りっぽいな」

茂みを抜けた先には見上げるほどの高い木々たちがあり、
リアラの予想通り、川が近くを流れていた。

中流辺りになるのか河原には大小と様々な大きさをした岩や石が転がっている。

「トキ、どこ・・・」

確証はなかったがリアラはトキの母親から話を聞いたときに
トキはカラス天狗に連れ去られたかもしれないと思ったのだ。

岩に気を付けながらくまなく探す。

「どこにーーーーあっ!」

大きな岩と岩と間に誰か倒れているのが見えた。

「トキ!」

名前を呼びながら近くに駆け寄る。
トキはうつ伏せになって倒れていた。

「トキ、大丈夫?トキ!」

肩を揺するが反応はない。
息をしているか確認しようとトキの体を仰向けにする。