恐怖病院

駆け戻って佳奈美の腕を掴んで無理にでも連れてこさせないと。
そう思ったのもつかの間、看護師が注射器を振り上げていた。
これじゃ間に合わない!

サッと血の気が引いた次の瞬間にその注射器は佳奈美の腕を切り裂いていた。
服が避けて血がジワリと滲んでくる。
佳奈美は顔をしかめてその場にしゃがみこんだ。

その姿が徐々に薄れていき、後の壁が見えはじめる。
「嘘でしょ佳奈美!」
叫ぶと佳奈美がこちらに視線を向けた。

すでに薄くなった顔で無理やり口角を上げて微笑んでくる。
「私のことは気にせずに……行って」
声がかすれて消えていく。
そして佳奈美は笑顔もままスーと消えてしまったのだった。

☆☆☆