恐怖病院

それぞれ佳奈美の顔の右側と左側をかすめて壁にぶつかる音が響いた。
真っ青になった佳奈美が通路へ滑り出てくる。
ドアが閉まる寸前に三冊目の資料が飛んできたが、それはドアの内側にドンッとぶつかって落下した。

「佳奈美大丈夫!?」
座り込んでいる佳奈美に慌てて駆け寄る。

危機一髪だったけれど、どこも怪我はしていないようだ。
「大丈夫……」
佳奈美は呆然として閉まったドアを見つめたまま、そう返事をしたのだった。

☆☆☆

通路へ脱出できて安心したのはほんの束の間のことだった。
薄暗い通路の奥からこちらへ近づいてくる足音がする。
私たちはその場から動かず警戒して前方を見つめた。