恐怖病院

さっきまでもつぶやきも止まり、誰かがこちらの様子を伺っているような雰囲気が漂ってきた。
「もしかして渚ちゃんか？」
貴也が声をかけるが、返事はない。

倉庫はそれほど広くないのに、物が詰め込まれているせいで先が見えない。
貴也は近くにあった古いほうきを掴んで握りしめた。
そして奥へと足を進める。

佳奈美が照らしてくれている光の中に浮かび上がってくるのは同じような光景ばかりだ。
誰もいない。

「もしかしてこれも怖がらせるための演出なのかな？　スピーカーとかで、子供の声を流してたのかも」
「そうだとすればここには誰もいないってことになるけど」
貴也がいぶかしげに答えたときだった。