恐怖病院

私は自分の腕を見つめた。
注射器で襲われたときに服が切り裂かれたけれど、怪我はなかった。

だから私は消えることなく、まだここにいることができるみたいだ。
「消えるって、一体どこに!?」
佳奈美が痛いほどに私の腕をつかむ。

その目には涙が滲んでいる。
私は首を左右にふるしかなかった。
なにがどうなっているのか、私にだってわからない。

一刻も早くここから脱出したいのに、それも叶いそうにはない。
「浩介に連絡が取れればいいけど」
貴也がそうつぶやいてスマホを取り出す。

けれどやっぱり電波はなくて、電話することは不可能みたいだ。
すぐに諦めてスマホをポケットへしまった。