恐怖病院

お客さんに攻撃してくることなんてないはず。
そんな油断があったんだと思う。
「危ない!」

貴也が叫ぶけれど私だけ逃げ遅れてしまったのだ。
振り下ろされた注射器の針が私の右腕をかすめた。
針は想像以上に鋭利になっているようで、それは半袖の衣服を割いて大きな穴が開いた。

それを見た瞬間呼吸が止まった。
遊園地のアトラクションでここまでするとは思えない。

この人は本気だ。タラリと冷や汗が頬を流れて床に落ちた。
「い、いや……やめて……」
震える声で懇願する私へ向けて看護師が再び注射器を振り上げた。
その顔はニヤニヤと笑っていて、まるで獲物を見つけた野生動物のように見えた。