恐怖病院

「は? 嘘だろ、本当に鏡の中か?」
浩介が鏡に手を添わせている。
「あの噂は本物だったってことか。それともこれも演出か?」

貴也はまだ半信半疑の様子だ。
鏡から出てきた手に掴まれて鏡の中に引きずり込まれたけれど、その瞬間少しだけ気を失っていた。

その間に左右反転させる演出をしたのかもしれない。
そう考えてから私はすぐに首を振ってその考えをかき消した。
そもそもお客さんが気絶しているのを見つけたら、すぐにキャストが助け出すはずだ。

「本当に鏡の中なのかも」
私はぬいぐるみを抱きしめて呟く。
「それにしてはアリスになった感じじゃないね」
佳奈美が苦笑いを浮かべていった。