恐怖病院

今度は貴也に腕を掴まれてみんなより一歩前に踏み出してしまった。
嫌な予感が更に大きく膨らんでいくのを感じる。
止めなきゃ!
そう思ったときだった。

「連れて行ってください」
それは浩介の声だった。
私は信じられない気持ちで浩介を見る。
浩介は楽しげに微笑んでいた。

「全員で言うんだ。いっせーの」
貴也が掛け声をかけると同時に「連れて行ってください」と3人の声が響いた。
ゾクリと背筋が寒くなる。

こころなしか吐く息が白くなった気がする。
全身が冷たい空気に包み込まれて、まるで真冬みたいだ。

私はぬいぐるみを持つ手に力を込めた。
「ほら、真希も」
佳奈美に言われてゴクリと唾を飲み込んだ。