それとも、やっぱりこの手洗い場にある鏡がそうなんだろうか?
割られた鏡を見つめて首をかしげる。
普通の鏡にしか見えないけど……。

割れた鏡にうつる自分の姿はいびつに歪んでいて気味が悪い。
少し離れようと後退りしたときだった。
突如トイレの個室のドアがバタンッと閉まったのだ。

「なに!?」
咄嗟に両手で頭を抱えて振り返る。
ドアは怖がらせるようにバタンッバタンッと開閉を繰り返している。
「大丈夫だよ真希。これは演出だから」

佳奈美に言われてホッと胸をなでおろした。
リアルな空間につい本物の怪奇現象だと思ってしまった。
額に流れてきた冷や汗を手の甲でぬぐう。