もちろんここは作りもののトイレだとわかっているけれど、色々な演出のせいで本物のトイレ臭さを感じた。
何年も使われていない、濁った水の匂いがして手で鼻をおおった。

頭上の蛍光灯はパチパチと消えたりついたりを繰り返していて、ずっと見ていると気分が悪くなってきそうだった。

「なんだか本格的な場所だね」
佳奈美がポツリと呟く。
今までの部屋も本物の病院を意識して作られたものだったけれど、トイレだけは格段にリアルに見えた。

「で、ここに問題の鏡があるんだよな?」
浩介がお化け屋敷そっちのけで鏡を探し始めた。
トイレの奥へ向かうと左手に掃除道具入れがあったが、大きな鏡は見当たらない。