次の部屋はトイレだった。
入って右手に3つの個室がありドアはすべて開いていた。
そして左手には割れた鏡と手洗い場がある。

「自分の顔が割れて見える」
貴也がその鏡に自分の姿を映して楽しんでいる。
鏡の中の貴也は割れ目のせいでいくつも目や鼻があり、顔が何十にも重なっているように見えた。

「これが噂の鏡?」
すかさず佳奈美が質問している。
貴也は「これは違う」と答えて更に奥へと進んでいく。

床のタイルもところどころ割れていてそこを踏むとパリパリと音が鳴った。
足元に注意していると今度はどこからか生ぬるい風が吹いてきて、私の体を包み込む。