資料の雨がやむのを待つのはかなりの時間が必要ようだ。
数千冊、数万冊の資料がここには保管されているから。

「なにか身を守るものがあればいいけど」
貴也がそう呟いて周囲を確認するけれど、ここにあるのは棚と資料だけで身を守れそうなものはなにもない。

けれどしばらく観察していると一箇所だけ通路に資料が落下してきていない場所を見つけたのだ。

この通路だけはなぜか無傷なままだ。
「ここなら通れるかも!」
期待に胸が膨らんでいく。

私とは逆に貴也は警戒心を強めているのがわかった。
「本当にここを通っていいと思うか?」
「だって、ここしか通れる場所はないでしょう?」