渚ちゃんが力強く頷いてくれたおかげで覚悟は決まった。
鏡の前で、あの言葉を3度唱える。
「連れて行ってください」

1度目の声はトイレ内によく響き、消えていった。
「連れて行ってください」
2度めの声は少しくぐもり、鏡の中に吸い込まれて行ったように感じられた。

「連れて行ってください」
そして3度目のとき、鏡の中から青白いてが突き出していた。
何本もの手が私と渚ちゃんの体にまとわりつき、腕を足を服を掴んで引きずりこむ。

無意識のうちに両足をふんばって引きずられまいとしていたけれど、無駄だった。
次に目を覚ましたとき、私と渚ちゃんは鏡の中にいた。
反転した世界で起き上がり、周囲を確認する。