このときはまだ、全員で脱出できると思って前向きな気持ちでいられることができたから。
でも、途中の通路で3人よりも少し小さな男の子を見つけたのだ。

榮太郎くんという名前で、ずっとここにいたんだと泣きじゃくりながら説明した。
その説明はよくわからなかったけれど、この子は敵じゃないと判断して一緒に逃げ出すことにした。

だけど出口が見えた瞬間、啓太くんがモップを渚ちゃんへ突きつけてきたのだ。
『なにするの!?』

危うくモップの先がぶつかりそうになった渚ちゃんが叫ぶ。
早くここから出たいのに、それを阻止されたように感じた。
『お前はここに残るんだ。1人見つかれば1人行方不明になる。それは絶対なんだ』