その言葉に私は渚ちゃんが持っているぬいぐるみに視線を向けた。
これはあの子の持ち物だったみたいだ。

火事で焼けてしまった設定だから、混乱の中でぬいぐるみと少女は離れ離れになってしまったんだろう。

「持ってるよ」
渚ちゃんが答えてそろそろと少女に近づいていく。
それに気がついた少女がギョロリとした大きな目を渚ちゃんへ向ける。

まるで今にも渚ちゃんへ向けて襲いかかってきそうな勢いに、心臓がバクバクとはね始めた。
でも大丈夫。
ここは鏡の世界じゃないんだから。

もうあんなに恐ろしいことは起きないんだから。
自分にそう言い聞かせている間に、渚ちゃんは両手でぬいぐるみを掴んで少女に突き出していた。