恐怖病院

自分が隠れていた場所を見てなにを思っているだろう。
その顔は無表情で、感情を読み取ることは難しかった。
しばらくその場から動くことができなかった渚ちゃんだけれど、ふいにこちらを見上げてきた。

「もう大丈夫だよ。行こう」
渚ちゃんはなにかが吹っ切れたようにそう言ったのだった。

☆☆☆

倉庫から出るとあとは短い通路を行けばお化け屋敷は終わりだ。
反転していない世界のお化け屋敷は反転した世界のお化け屋敷よりもずっと簡単で、怖くなかった。

常に命の危機と隣合わせでいたためか、いつもの怖がりな自分でも前に進むことができたように思う。
それに、隣にいる渚ちゃんの存在も大きかった。