強く叩けば鏡が割れてしまうかもしれないし、なす術はなかった。
「とにかくお化け屋敷から出よう」
私は震える足を奮い立たせて歩き出したのだった。

☆☆☆

トイレから出て通路を歩いていくと、4つ目の部屋はすぐに現れた。
鏡の世界ではもっと長く感じた通路だけれど、現実では部屋と部屋はすぐ隣り合わせくらいの位置にあったみたいだ。

病室と書かれたプレートの前まで来て立ち止まり、渚ちゃんを見つめる。
渚ちゃんが不安そうな表情で見つめ返してきた。
「ここは鏡の中じゃないから、もう誰も襲ってきたりしないからね?」

その言葉に渚ちゃんは頷いている。
けれど半分は自分自身へ言い聞かせるための言葉だった。