ねえ、もう少しだけキスをして

「苺音(いちね)、ごめんだけど、別れてほしいんだ。」

・・・・・・・・・・・・・・・え?
疑問符だらけの頭の中を辛うじて稼働させる。

「えーと、あの・・・」

あなたは誰ですか??

私のぼうっとしていた頭の中に割り込んできた意味のわからない言葉。
それを理解するより前に、あなたが誰なのかわからない。

なんて答えようか、頭の中で答えをこねくり回す。
頭の中は真っ白で、何も浮かぶはずがない。

「だから、苺音、俺と別れて・・・「いや、ちょっと待とう?」

この状態で繰り返されても、余計頭が混乱するだけだし。
私は片手で目の前の男子の言葉を制止して、吐き出すように言った。

「ごめんなさい、用事があるのでまた・・・」


「あははっ!マジでウケるんだけど!」

うるさすぎて嫌になる。

放課後は皆は学校から縛り付けられていたのを解放されたって、せっかく勉強を教わっているのにも関わらず愚痴を吐き出している。
不愉快極まりない。

周りの音を遮断するようにイヤホンを耳に押し込む。
そのまま駅まで一気に走り出そうと思って足を踏み出した瞬間、呼び止められた。

認識のない男の子が私の名前を読んでいた。
少しだけクセのある黒髪をくしゃっと右手でかきあげながら、私にゆっくりと言った。